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原発事故と平井憲夫さんの遺言 (7)この国は狂っている

●廃炉も解体も出来ない原発

 1966年に、日本で初めてイギリスから輸入した16万kwの原子炉が茨城県の東海村で稼動しました。
その後はアメリカから輸入した原発で、途中で自前で造るようになりましたが、今では、この狭い国に135万kwというような巨大なものも含めて51基の原発が運転されています。
 具体的な廃炉・解体や廃棄物のことなど考えないままに動かし始めた原発ですが、厚い鉄でできた原子炉も大量の放射線を浴びるとボロボロになるんです。
だから、最初、耐用年数は10年だといっていて、10年で廃炉、解体する予定でいました。
しかし、1981年に10年たった東京電力の福島原発の1号機で、当初考えていたような廃炉・解体が全然出来ないことが分かりました。
このことは国会でも、「原子炉は核反応に耐えられない」と、問題になりました。
 この時、私も加わってこの原子炉の廃炉、解体についてどうするか、毎日のように、ああでもない、こうでもないと検討をしたんですが、放射能だらけの原発を無理やりに廃炉、解体しようとしても、造るときの何倍ものお金がかかる、どうしても大量の被ばくが避けられないことなど、どうしようもないことが分かったのです。
原子炉のすぐ下の方では、決められた線量を守ろうとすると、たった十数秒くらいしかいられないんですから。
 机の上では何でもできますが、実際には人の手でやらなければならないから、とんでもない被ばくを伴うわけで。
ですから、放射能がゼロにならないと、何にもできない。
放射能がある限り廃炉、解体は不可能なんです。
 人間にできなければロボットで、という人もいます。
でも、研究はしていますが、ロボットが放射能で狂ってしまって使えないんです。
 福島では、原発を売り込んだアメリカのメーカーが自分の国から作業者を送り込み、日本では到底考えられないほどの大量の被ばくをさせて、原子炉の修理をしたんです。
今でもその原発は動いています。
 最初に耐用年数が10年といわれていた原発が、もう30年近く動いています。
そんな原発が11基もある。
くたびれてヨタヨタになっても動かし続けていて、 私は心配でたまりません。
 また、神奈川県の川崎にある武蔵工大の研究用の原子炉はたった100kwですが、これも放射能漏れを起こして止まっています。
机上の計算では、修理に20億円、廃炉にするには60億円もかかるそうですが、大学の年間予算に相当するお金をかけても廃炉にはできないんです。まず停止して放射能がなくなるまで管理するしかないのです。
それが100万kwというような大きな原発ですと、本当にどうしようもありません。
 
●「閉鎖」して監視・管理

 なぜ、原発は廃炉や解体ができないんでしょうか。
それは、原発は水と蒸気で運転されているので、止めてそのままに放置しておくと、配管がサビてボロボロになってしまい、穴が開いて放射能が漏れてくるからです。
原発は核燃料を入れて1回でも運転すると、放射能だらけになって、止めたままにしておくことも、すぐに廃炉、解体することもできないものになってしまうんです。
 先進各国で、閉鎖した原発は数多くあります。
廃炉、解体ができないので、みんな「閉鎖」なんです。
閉鎖とは発電を止めて、核燃料を取り出しておくことですが、ここからが大変です。
 特に、放射能まみれになってしまった原子炉は、運転しているときほどではないにしろ、定期的に点検をして悪くなったところを補修し、放射能が外に漏れださないようにしなければなりません。
放射能が無くなるまで、発電しているときと同じように監視し、管理をし続けなければならないんです。
<注:98年3月に日本ではじめて閉鎖した東海原発は、いつごろ解体できるかまったく不明。停止中のもんじゅの管理費は年間220億円>
 今、運転中が51基で、建設中の3基を入れると、全部で54基の原発が日本列島を取り巻いています。
これ以上運転を続けると、あまりにも危険な原発もいくつかあります。
この他に、大学や会社の研究用の原子炉もあります。
小さいのは100kw、大きいのは135万kw、大小合わせて76基もの原子炉があることになります。
 しかし、日本の電力会社が、電気を作らない、閉鎖して金儲けにならない原発を、本気で監視し続けるか大変疑問です。
それなのに、さらに新規立地や増設を行おうとしています。
その中には、東海地震のことで心配な浜岡に5機目の増設<注:04年3月試運転開始>をしようとしていたり、福島ではサッカー場と引換えにした増設もあります。
新設では新潟の巻町<注:03年白紙撤回>や三重の芦浜<注:00年白紙撤回>、山口の上関、石川の珠洲<注:04年凍結>、青森の大間や東通<注:98年着工>などいくつもあります。
それで、2010年には70~80基にしようと。実際、言葉は悪いですが、この国は狂っているとしか思えません。
 これから先、必ずやってくる原発の閉鎖、これは本当に大変深刻な問題です。
近い将来、閉鎖された原発が日本国中いたるところに出現する。
これは不安というより、不気味です。ゾーとするのは、私だけでしょうか。
 
●どうしようもない放射能のゴミ

 それから、原発を運転すると必ず出る核のゴミ、毎日、出ています。
ドラム缶に詰められた低レベル放射性廃棄物、名前は低レベルですが、その中にはそばに数時間もいたら、致死量の被ばくをするようなものもあります。そんなドラム缶が全国の原発などで約80万本以上も溜まっています。
 日本が原発を始めてから1969年までは、どこの原発でも核のゴミはドラム缶に詰めて、近くの海に捨てていました。
その頃はそれが当たり前だったんです。
私が茨城県の東海原発にいた時、業者はドラム缶をトラックで運んでから、船に乗せて、千葉の沖に捨てに行っていました。
 しかし、私が原発はちょっとおかしいぞと思ったんは、このことからで、海に捨てたドラム缶は1年も経つと腐ってしまうのに、中の放射性のゴミはどうなるんだろうか、魚はどうなるんだろうかと思ったのがはじめでした。
 現在は、原発の低レベルのゴミは、青森の六ケ所村へ持って行っています。
全部で300万本のドラム缶を、これから300年間管理するといっていますが、一体、300年ももつドラム缶があるのか、廃棄物業者が300年間も続くのかどうか。どうなりますか。
 もう一つの高レベル廃棄物、これは使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出した後に残った放射性廃棄物です。
日本はイギリスとフランスの会社に再処理を頼んでいて、フランスから高レベル廃棄物として最初の28本が1995年に返ってきました。
<注:04年現在892本>
 これはドロドロの高レベル廃棄物をガラスと一緒に固て、金属容器に入れたものです。
この容器のそばに2分間いると死んでしまうほどの放射線を出すそうですが、これを一時的に青森県の六ケ所村に置いて、30年から50年間くらい冷やし続け、その後、どこか他の場所に持って行って、地中深く埋める予定だといっていますが、安全になるのに100万年もかかるというようなものですから、よその国でも計画だけはあっても、実際に処分した国はありません。
みんな、困っています。
 原発自体についても、国は止めてから5年か10年間、密閉管理してから、粉々にくだいてドラム缶に入れて、原発の敷地内に埋めるなどとのんきなことを言っていますが、それでも1基で数万tくらいの放射能まみれの廃材が出るんですよ。
生活のゴミでさえ捨てる所がないのに、一体どうしようというんでしょうか。
とにかく日本中が核のゴミだらけになることは目に見えています。
早くなんとかしないといけないんじゃないでしょうか。
それには一日も早く、原発を止めるしかないんですよ。
 私が北海道で、「放射能のゴミを50年も、300年も監視続ける」と話していたら、中学生の女の子が、手を挙げて、
 「お聞きしていいですか。
そのゴミの監視は、今の大人がするんですか? そうじゃないでしょう。
次の私たちの世代、また、その次の世代がするんじゃないんですか。 だけど、私たちはいやだ」
 と叫ぶように言いました。
この子にちゃんと返事の出来る大人はいますか。
 それに、50年とか300年とかいうと、それだけ経てばいいんだというふうに聞こえますがそうじゃありません。
原発が動いている限り、終わりのない永遠の50年であり、300年だということです。

by e-kassei | 2007-07-23 12:00 | 健康を考える