原発事故と平井憲夫さんの遺言 (6)日本だけが執着する「地獄の王」の愚策

●日本のプルトニウムがフランスの核兵器に?

 「もんじゅ」に使われているプルトニウムは、日本がフランスに再処理を依頼して抽出したもんです。
再処理というのは、原発で燃やしてしまったウラン燃料の中に出来たプルトニウムを取り出すことなんですが、プルトニウムはそういうふうに人工的にしか作れないもんです。
 そのプルトニウムが「もんじゅ」には約1.4tも使われています。
長崎の原爆は約13kgだったそうですが、一体、「もんじゅ」のプルトニウムでどのくらいの原爆ができますか。
それに、どんなに微量でも肺ガンを起こす猛毒物質です。
半減期が2万4000年もあるので、永久に放射線を出し続けます。プルトニウムというのは、「地獄の王(プルートー)の元素」というような意味で、この世で一番危険なものだといわれているんですよ。
 しかし、日本のプルトニウムが1995年、南太平洋でフランスが行った核実験に使われた可能性があることを知っている人は、あまりいません。
フランスの再処理工場では、プルトニウムを作るのに核兵器用も原発用も区別がないんです。
だから、日本のプルトニウムが、この時の核実験に使われてしまったことは、ほとんど間違いありません。
 日本がこの核実験に反対をきっちり言えなかったのには、そういう理由があるからです。
もし、日本政府が本気でフランスの核実験を止めさせたかったら、簡単だったんです。
つまり、再処理の契約を止めればよかったんですから。
でも、しなかった。
日本とフランスの貿易額で2番目に多いのは、この再処理のお金なんですよ。
唯一の被ばく国といいながら、日本のプルトニウムがタヒチの人々を被ばくさせ、きれいな海を放射能で汚してしまったに違いありません。

●石油ストーブでガソリンを燃やすようなこと

 世界中が諦めたのに、日本だけはまだプルトニウムで電気を作ろうとしているんです。
普通の原発で、ウランとプルトニウムを混ぜた燃料(MOX燃料)を燃やす、いわゆるプルサーマルをやろうとしています。
しかし、これは非常に危険です。分かりやすくいうと、石油ストーブでガソリンを燃やすようなことなんです。
原発のもともとの設計がプルトニウムを燃やすようになっていないし、核分裂の力がウランとはケタ違いに大きいから、原爆の材料にしているわけなんですから。
 いくら資源がない国だからといっても、あまりに酷すぎるんじゃないでしょうか。
早く原発を止めて、プルトニウムを使うなんてことも止めなければ、あちこちで被ばく者が増えていくばかりです。

●日本には途中でやめる勇気がない

 世界では原発の時代は終わりです。
原発の先進国のアメリカでは「2015年までに原発を半分にする」ことにしています。
それに、プルトニウムの研究も大統領命令で止めています。あんなに怖いもの、研究さえ止めました。
 「もんじゅ」のようにプルトニウムを使う型の原発(高速増殖炉)は、アメリカはもちろんイギリスも止めました。
ドイツは出来上がったのを止めて、リゾートパークにしてしまいました。
世界の国がプルトニウムで発電するのは不可能だと分かって止めたんです。
日本政府も今度の「もんじゅ」の事故で「失敗した」と思っているでしょう。
でも、まだ止めない。これからもやると言っています。
 どうして日本が止めないかというと、日本にはいったん決めたことを途中で止める勇気がないからです。
この国が途中で止める勇気がないというのは非常に怖いです。
みなさんも、そんな例は山ほどご存知でしょう。
 とにかく日本の原子力政策はいい加減なんです。
日本は原発を始める時から、後のことは何にも考えていなかった。
その内に何とかなるだろうと。
そんないい加減なことでやってきて、何十年もたった。
でも、廃棄物一つのことでさえ、まだ、どうにもできない。
 原子力局長をやっていた島村武久さんという人が退官して、『原子力談義』という本で、「日本政府がやっているのは、ただのつじつま合わせに過ぎない、電気が足りないのでも何でもない。
あまりに無計画にウランとかプルトニウムを持ちすぎてしまったことが原因です。
はっきりノーといわないから持たされてしまったのです。
そして日本はそれで核兵器を作るんじゃないかと世界の国々から見られる、その疑惑を否定するために核の平和利用、原発をもっともっと造ろうということになるのです」と書いていますが、これもこの国の姿なんです。
 
●ほとんどなくなった大学の原子力工学科

 もう一つ、大変なことは、いままでは大学に原子力工学科があって、それなりに学生がいましたが、今は若い人が原子力から離れてしまって、東大をはじめほとんどの大学からなくなってしまいました。
机の上で研究する大学生さえいなくなったんです。
 また、日立と東芝にある原子力部門の人も3分の1に減って、コ・ジェネレーション(電気とお湯を同時に作る効率のよい発電設備)のガス・タービンの方へ行きました。
メーカーでさえ、原子力はもう終わりだと思っているんです。

by e-kassei | 2007-07-23 12:01 | 健康を考える