原発事故と平井憲夫さんの遺言 (2)大地震が起これば配管は支えきれない

●人間の血管のような配管が危ない

 阪神・淡路大震災のような地震が、原発を不意に襲った時、本当に原発は大丈夫なのでしょうか。
 原発には網の目のように、何十kmもの配管があります。
配管は人の体でいえば血管と同じで、例えどのような配管であろうと、1本でも破断したら、原発全体の大事故につながる可能性が大きいのです。
電力会社はよく「主要な配管は」とか言いますが、主要でない配管は原発の中には1本もありません。
 その大事な配管が、いつ落下してもおかしくないような状態になるんです。
問題は配管のサポート取り付け金具なんですが、配管はこのサポート取り付け金具で壁に固定しているんです。
配管といっても、5mくらいの短いものも、3人がかりで運ぶような重いものもありますし、直径が1mくらいの大きなものもあります。
そういう配管が運転中は耐えず振動しているんです。
その振動のために、本来は配管を支えるべきサポートがぐらぐらになって、逆に配管にぶら下がっているような状態になってしまうことがあるんです。
そういうところを大地震が直撃した時に、重い配管がユッサユッサと揺れて、重い配管を支えきれなくなって、壊れてしまう恐れがあるのです。運転中の重い配管が支えを失ったらどうなるか、怖いどころの話じゃないですよ。
 それから、配管は何万か所も溶接でつないでいますが、その溶接の仕方に問題があります。
コストダウンするということで、配管を工場で半分組み立ててきますから、それを現場で合わせようとすると、どうしてもズレが生じます。
そのズレを素人は無理やり引っ張って溶接してしまうんです。
配管は運転状態では熱を帯びて伸びますから、そのために調整するところが決めてあるんですが、そのはじめから考えられていた必要なズレが、現場で無理やり引っ張ってしまうと、なくなってしまいます。
配管は絶対に引っ張ってつないじゃダメです。そういう無理な施工が事故につながるんです。
また、事故だけでなく、地震の複雑な揺れにも耐えられないと思います。
 配管が破断すれば、原子炉の制御が効かなくなって、落下した配管などで原子炉、その他の機器類も破損する可能性が大きいんです。

●原発の心臓は宙ぶらりん

 また、東北、東京、中部、中国、北陸、日本原電(日本原子力発電)など各電力会社の原発は、沸騰水型の原発です。
原子炉の中でウランをゆっくり核分裂させて、その熱で直接水を沸騰させ、できた蒸気でタービンを回して電気を作る型の原発です。
原発では50tを越す再循環ポンプがついていますが、これは人間でいえば心臓にあたるものです。
これが地上に固定されていなくて、宙ぶらりんの状態ですから、地震によって上下左右に振り回されれば耐えきれません。
 東京電力の福島原発では、この再循環ポンプが壊れるという大事故が起こっています(1989年)。
この事故はポンプと配管の無理なつなぎ方も原因の1つでした。
 現場の事を知らないままに机上の議論だけをしていたり、電力会社の説明を鵜のみにするのではなく、科技庁長官はじめ科技庁の役人は、自分の目で見て、自分の手でさわって、危険なら危険だと、国民に知らせることが急務ではないでしょうか。
事故の後、「よりいっそうの安全を確保し、慎重に運転するよう指示した」などと言っていますが、このような言葉遊びでは、国民は納得できないと思います。

●いいかげんな原発の耐震設計

 阪神・淡路大震災後に、慌ただしく日本中の原発の耐震設計を見直して、その結果を9月(1995年)に発表しましたが、「どの原発も、どんな地震が起きても大丈夫」というあきれたものでした。
私が関わった限り、初めのころの原発では、地震のことなど真面目に考えていなかったんです。
それを新しいのも古いのも一緒くたにして、大丈夫だなんて、とんでもないことです。
 1993年に、女川原発の1号機が震度4くらいの地震で出力が急上昇して、自動停止したことがありましたが、これは大変な事故でした。なぜ大変だったかというと、この原発では、1984年に震度5で止まるような工事をしているんですが、それが震度5ではないのに止まったんです。わかりやすく言うと、高速道路を運転中、ブレーキを踏まないのに、突然、急ブレーキがかかって止まったと同じことなんです。
これは、東北電力が言うように、止まったからよかった、というような簡単なことではありません。
5で止まるように設計されているものが4で止まったということは、5では止まらない可能性もあるということなんです。
つまり、いろんなことが設計通りにいかないということの現れなんです。
 こういう地震で異常な止まり方をした原発は、1987年に福島原発でも起きていますが、 同じ型の原発が全国で10もあります。
これは地震と原発のことを考えたら、非常に恐ろしいことではないでしょうか。

by e-kassei | 2007-07-23 12:06 | 健康を考える